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わすれな草、浮かれて

ショート6「重い煮込み」

匂いにつられて、森の奥深く入ってみると、
真冬の澄み切った光が、辺りを照らしていた。

テーブルに置かれた、一枚の皿。

幾重にも連なった光は、木漏れ日と相まって、
そこここに、モザイクのデザインを施していた。

「いい匂いだ。。。」

カトラリーなど何も無いものだから、
皿を直接口に当てるしか、飲む術がない。

迷うことなく、その液体を飲み干し、
あごを何回も動かし、咀嚼しては、飲み込んだ。

「ん?何だ、これは。。。」

「はははは。。。」

その嫌味に調理された、笑いが、森にこだました。

「スープとでも思ったのか?」

光に透けるような、絹糸のような髪をかきあげ、
こちらに向けた顔は、鬼の設えであった。

「俺様、特性の、煮込み料理だ!」

「この、どこが煮込みなのだ!!!
ただの、甘く、固い、ケーキではないか!!!」

その顔は、唐辛子のように、真っ赤で、
どちらが、赤鬼なのか、見紛うくらいであった。

「勝手に、そなたが、間違えただけで、
とばっちりを、こちらが受ける覚えはないわ!」

そうやって、振り下ろした金棒に、
咄嗟に、その男は、身体を避けようとしたが、
己の身体は、重石と化して、微動だにしない。

「なんだ。これは。。。一歩も動か。。。」

「はははは。。。その格好、面白いな。
まるで、神々のようにドッシリと立っているな。
あはははは。。。面白い!面白い!」

ブーン。

「ん?これ、どうなってんだ?」

確かに、その金棒は、男を貫いたハズなのだが、
空を斬る音だけが、辺りの森を震わせている。

ブーン。
ブーン。

すると、光に包まれた、その森の上には、
積乱雲が、徒党を組んで、忙しそうに、
雷を背に、獅子の咆哮をあげていた。

「そこのもの。その金棒を返せ!」

目の前に現れたのは、風の神であった。

「勝手に、人のものを盗むとは何事ぞ!
わがもの顔で、何をしておる?」

笑いは凍りつき、二人は同じ格好をしている。

風の神は、その森へと降り立つと、
その姿を、じっくり凝視した。

「どっちもどっちじゃ。狸と狐ならぬ、
赤鬼と青鬼の化かしあいとは。。。稀有な風景よのー。
思い込みの成せる業じゃな!あっはっはっはっ。。。」

鬼の手から取り戻した金棒を、
数回上下に動かすと、風の絨毯が現れ、
それに乗って、風の神は、雲の上へと消えていった。

「あれ、風来棒だったのか。。。
だから、身体を素通りしていたのか。。。」

二人の鬼は、森の倒木の上に、力なく腰を下ろした。
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