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わすれな草、浮かれて

ショート1「進化アローン」

「寸でのところで、最後になりかけた!
冗談じゃないぜ。ふぅー。。。」

その毛むくじゃらだった、風体は、
滴る汗で、随分、貧相な肉づきを露呈していた。

外は、吹雪いていたのに、
ここは、風がない分、暖かいのかと
最初、思っていたが、どうやら様子が違う。

それに、ぼんやりとしているが、
暗闇の奥の方には、微かに光らしきものが見える。

「おーい!誰か居るのか?」

すると、その声に、呼応するように、
一斉に、何十層もの音の塊が響いていた。

「おーい!」

今度は、少し声のトーンを上げて、叫んでみた。

「おーい!」

その後、何回も叫んでみたが、応答はない。

「なんだ。さっきのは幻聴だったのか。。。」

そう呟いて、視線を落とした時、足元に、
一匹の小さな生物が、こちらを凝視していたのだ。

「さっきから、何回も。。。うるさいのよ!
今日こそは、やっと眠れるかと思ったのに。。。」

その小さな身体は、蝋燭のような炎を宿していた。
透き通って、ゆらゆらと炎は揺れている。

「いや、それは悪かったな。だが、俺には、
確かに、声の塊が聞こえていたんだ。しかし、
見渡したところ、君しか居ないようだな」

「そうよ。ここは私のテリトリーよ。
だから、アナタは侵入者ってわけ。
自然界では、ありえないわ!だから。。。
みんながやるように、威嚇したの!」

語気を強める程に、益々、炎は、大きくなっていく。

「なのに、後ずさりするどころか、何回も叫ぶ始末。
これでお分かりかしら?アナタ、どこか行ってよ!
この穴から、飛べるわ。そこに入るだけだから簡単よ」

言われるままに、おぼつかない足取りで、
その穴に近づいていった。
さて、穴に入ろうと、身体を曲げた時だった。

「そうだ。侵入者さん、最後に聞いときたいわ。
ねね、アナタ、何っていうの?」

「俺?さあ、名前は知らないが、最後にあったやつが、
何とか原人?って言ってたような。。。」

「そう。でも、アナタ、さっきとは様子が違うわよ。
毛むくじゃらは無くなって、スベスベしてるし、
それより、四足じゃなくて、二足歩行になっているわ」

そう言われて、自分の姿を見ようとした途端、
彼女の身体の炎は、ふっと消えてしまった。
そして、お互い、一言も発することなく、
気まずい空気だけが漂い続けていた。

「さて、ここに入るか。。。」

その呟きだけを残して、彼は穴の中へと消えていった。
また、ほんのりと炎が姿を現した。

「行ったわ。彼のテリトリーに!これで、やっと。。。
カゲロウの私も眠れるわ。次の夏まで!」

外の吹雪は、まだまだ衰えを知らない。




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