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わすれな草、浮かれて

ショート8「換わり雛」

「桃の花まで飾ると、
それらしくなるわね」

「うん。緋毛せんの赤も効いてるし!
でも、その分、人形たちの色褪せ具合が、
若干、際立つ。。。かもね。。。」

「そうね。。。
随分、出していなかったから」

この部屋に居るのは、
成人を迎えたばかりの娘と、
その母親の二人であった。

「少し防虫剤の匂いが気になるわ。
ちょっと窓を開けてくれる?」

「分かったわ、ママ」

まだ冬の香りを残す風が、
窓の隙間から、この部屋に入ってきた。

風が人形の頬をかすめた時、
その両の目はカッ!と見開いた。

「ちょっと、娘さんの身体を借りるわよ。
長い間、人形の中だけなんて、真っ平よ!」

隣で、横たわっている、母親の姿態は、
人形のそれへと変化していった。

「では、お二人は、雛壇に!
傍から見ているのと、実際、こうやって、
置かれた立場から見る風景は、
随分、違うんじゃないかしら。。。」

おぼつかない手で、二体の人形を、
何とか置いた直後であった。

きゃああああああ。。。

娘の姿になったばかりの彼女は、
立ち上がることさえ、ままならず、
雛壇の前で、転倒してしまった。

窓から流れてくる、春とは名のみの風が、
すっかり部屋の温度を、
外気と変わらなくさせている。

ふふふふ。。。
ふふふふ。。。

二人の声が、風と交差した。

(僅少の推敲+加筆あり♪@2/24)
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